オフショア開発ガイド » ベトナムのオフショア開発事情 » ベトナムにおけるオフショア開発の今後

ベトナムにおけるオフショア開発の今後

ここでは、今後のベトナムにおけるオフショア開発の見通しについて考察しています。中国からの工場移管等が急ピッチで進み、特にここ数年、ベトナムの経済発展は急ピッチで進んでいます。経済発展に伴い、現地での人件費も上昇中。安い人件費を目的にオフショア開発を進めている日本企業にとって、やや気になる状況です。

ベトナム経済の現状と今後の見通し

2018年は過去10年で最も高い経済成長率

ベトナム政府の統計によると、2018年の単年におけるベトナムの実質GDPの成長率は7.1%。過去10年間、ベトナム経済は高い成長率を続けてきましたが、その勢いは直近でも衰えることなく、ここ10年でもっとも高い経済成長を遂げています。

2018年の成長率を加算すると、2018年を起点にした過去5年間の平均実質GDP成長率は6.59%。2019年の実質GDP成長率については、ベトナム政府は6.6~6.8%を目標に掲げていますが、現状の推移に鑑みると、この目標も決して非現実的な数値ではありません。2019年のベトナムの実質GDP成長率は2018年のそれを超える、と予測する識者もいるほどです。

参考サイト:独立行政法人日本貿易振興機構/ビジネス短信

世界中から寄せらせる巨額のベトナム投資

人件費の安さや勤勉な国民性などを背景に、ベトナムには、日本を含めた多くの国々から投資が集まってきました。2018年におけるFDI(海外直接投資)の実行額は、前年比で実に9.1%像の191億ドルとなっています。

以下、在ベトナム日本大使館経済班が作成した「2019年第1四半期ベトナム経済事情」を参照し、対ベトナムの国別累積FDI認可額を上位から確認してみます。

対ベトナムの国別累積FDI許可額
件数 許可額
韓国 7,661 640.1億ドル
日本 4,096 568.7億ドル
シンガポール 2,210 488.2億ドル
台湾 2,620 318.2億ドル
英領バージン諸島 803 210.7億ドル
香港 1,501 204.7億ドル
中国 2,299 142.2億ドル
マレーシア 593 124.9億ドル
タイ 532 104.7億ドル
オランダ 328 95.5億ドル
その他 5,482 567.0億ドル
合計 28,125 3,464.9億ドル

ベトナムの将来性に目を付け、過去、ベトナムに巨額の投資を行ってきた国は日本だけではなかったことが分かります。

海外からの投資は安定的に増加する見通し

形式上の政治体制は社会主義を貫くベトナムですが、1980年代から始まったドイモイ政策により、経済の実質は資本主義となりました。

以来、海外市場との競争に晒される中で、ベトナムの市場開放と経済政策はスピード感を持って進展。近年でも、TPPへの加盟やEUとのFTAの締結、AEC(アジア経済共同体)の発足など、海外市場への門戸開放が着々と進んでいます。

このような経済政策の中で、海外からベトナムに流入する投資は、今後まだまだ続くと予測されます。日本の富国生命のレポートでは、ベトナム経済は2050年まで安定的な成長を続けると報告されています。

中国からベトナムへの移管が続く製造業

長く中国で稼働していた製造業の工場が、近年、海外へと多く移管しています。世界中でビジネス展開をする大手企業だけではなく、中国に小さな工場を持っていた中堅企業まで、近年は他国へと工場を移管しはじめました。

移管先となっている代表的な国がベトナム。工場移管によりベトナムには雇用が創出され、その結果、ベトナムの個人消費は1年で7%ほど上昇しました。

ベトナム国内の中でも、特に著しい成長を見せているエリアが、中国にほど近いハイフォン市。直近で約16%という驚異的な経済成長率を実現しています。

ちなみに、ハイフォン市の経済成長の背景には、アメリカによる対中国の制裁課税があります。いわゆる米中貿易摩擦により、ハイフォン市を始めベトナム全土が経済的な恩恵を享受する形となっているようです。

なお、かりに米中が和解して貿易摩擦が解消したとしても、ベトナムを始めとした海外へ移管した工場が、ふたたび中国に大挙して戻るとは想定できません。なぜならば、アジア各国の中でも中国の人件費は特に高騰しているため、投資先としての魅力が大きく下がっているからです。

ベトナム経済における今後の課題

インフラ整備が不完全

経済発展が著しいベトナムですが、その経済発展のスピードにインフラ整備が追いついていない、という現状があります。たとえば、やや信じがたい話ですが、実際に近年まで、ベトナムでは電力不足による停電が多く見られていました。

また2019年現在でも、交通インフラの整備は大きく遅れています。主要都市であるホーチミンとハノイをつなぐ交通機関ですら、整備が十分に進んでいません。かりにトラックで両都市間を移動した場合、渋滞も慢性化していることから片道3~4日ほどはかかるそう。平均100kmのペースで移動すれば17時間で到着する距離なので、いかに交通インフラが整備されていないかが分かるでしょう。

なおベトナム政府は、国内のインフラ整備を最優先政策として進めています。よってこれら交通インフラの問題も、今後数年ほどで概ね解消する可能性があるでしょう。

改革が遅い国営企業

資本主義経済がだいぶ浸透したベトナムとは言え、かつては社会主義経済(計画経済)を採用していたことや、現在でも社会主義体制の政治を維持していることもあり、ベトナム国内には国営企業が多く存在します。

国際競争力を付けるため、ベトナム政府は国営企業の民間払い下げを推進していますが、まだ十分なスピード感で同政策が進んでいるようには見えません。

また2015年より、海外からベトナム国内企業への外資出資規制を撤廃していますが、政府の干渉が多いことや情報開示が不十分であることから、こちらの政策もうまくはいっていません。

人件費の上昇

日本がベトナムでオフショア開発を行ってきた背景には、人件費の安さと勤勉な国民性がありました。もちろん、現在でも勤勉な国民性は変わりありませんが、ここ数年で人件費は大きく変わっています。

2012~2018年までのわずか6年の間で、ベトナムの最低賃金は約2倍に上昇しました。2018年の最低賃金引き上げ率は前年比平均6.5%となり、約175ドルまで上昇。約110ドルのミャンマー、約170ドルのカンボジアを、かねてから「人件費が安い」と言われてきたベトナムが抜き去った形です。

人件費の上昇は、もちろん、ベトナムの労働者にとっては歓迎すべき事態です。一方で、人件費の安さに目を付けてオフショア開発をしてきた海外企業にとっては、決して歓迎すべき事態ではありません。

オフショア開発国としての魅力は低下しつつある?

先にご紹介したとおり、日本によるベトナムへと累積投資額は、韓国のそれに次いで世界第2位。ここまで熱心にベトナムでオフショア開発をしてきた最大の理由は、ベトナムにおける人件費の安さでした。

ところがベトナムの人件費は、近年、経済発展にともなって急激に上昇中です。見方を変えれば、オフショア開発国としてのベトナムの利点は、だいぶ薄らいだということにもなります。

もちろん、それでもまだベトナムでオフショア開発をする利点がなくなったわけではありません。ただし、今後ベトナムでオフショア開発を検討する方は、その経済発展にともなう人件費の推移を、しっかりと注視していくべきでしょう。

参考サイト:「2019年第1四半期ベトナム経済事情」(在ベトナム日本大使館経済班)

B!ブックマーク Twitter Facebook LINE